抗がん剤の副作用
抗がん剤には副作用があります。
一般的に言われている副作用の説明と、白血病の抗がん剤治療中の夫に、実際に起きた副作用を紹介します。
抗がん剤が全身をめぐる際にがん細胞だけでなく、正常な細胞にも影響を与えます。
特に粘膜や神経、皮膚、毛根、生殖器などが影響を受けやすくなり、その他にも内蔵、骨髄(血液細胞を造る)にも影響を及ぼすことで様々な副作用が起こります。
吐き気・腹痛・下痢・便秘・口内炎・脱毛・しびれ・白血球、赤血球、血小板の減少・貧血・出血・感染症に罹りやすい など
副作用の起こる時期
副作用の症状はそれぞれ起こる時期が違います。
【抗がん剤投与当日】
アレルギー反応が出る場合もあります。
通常抗がん剤を投与して5~30分以内に起こることが多く、この間は医師や看護師が何度も異常がないか確認してくれるので、体に異変を感じたらすぐに伝えるようにしてください。
【投与後1週間】
吐き気、嘔吐、食欲低下、倦怠感、便秘 など
吐き気にはよく効くお薬があるとのこなので、症状が出たら処方してもらってください。
(夫はまったく吐き気は感じませんでした)
【投与後2週間~】
発熱・口内炎・下痢・皮膚障害・肺障害 など
酷くなると肺炎を起こす可能性があると説明されました。
「皮膚障害」
・知覚過敏 手足がヒリヒリしたり、ちくちくしたりする
・色素沈着 皮膚が黒ずむ・爪が脆弱化し剥離したり黒くなる。
・皮膚の乾燥 全身を清潔に保ち保湿を心がけることが大切です。
強い紫外線はさけてください。
「味覚障害」
・食べ物の味がわからない
・違う味に感じる
・何を食べても美味しくない
・何も食べてないのに口の中に味を感じる
「脱毛」
抗がん剤の種類によって脱毛するものがあります。
気になる方は医師に確認して、あらかじめウィッグや帽子などを用意してください。
長い髪が抜けると精神的ダメージも大きいので、事前に短くされる方が多いです。
『この頃に骨髄抑制の為、白血球、赤血球、血小板、好中球が低下します。』
骨髄抑制
白血球の中の好中球が減ることで感染症に罹りやすくなり、重篤な状態になることもあります。
38℃以上の発熱・寒気・震え・咳・歯肉痛・口内炎・傷口や肛門の腫れ、痛み・発赤・血尿など
『自分で出来る予防策』
手洗い、うがい、歯磨き、マスク、風邪をひいている人には近づかない、人の多い所には行かない、生ものは食べない など。
『皮膚、肛門、尿路からの感染』も注意が必要です。
- 入浴やシャワーで体を清潔に保つ
- 入浴の際は柔らかいタオルか手で洗う
- 皮膚に傷を付けないようにやさしく洗う
- 衣類は清潔なものを着る
- 保湿ローションやクリームを塗り皮膚の乾燥を予防する
症状があれば医師、看護師に伝え、抗生物質や抗真菌剤、抗ウイルス剤の内服や点滴などの適切な処置を受けます。
※在宅の場合は病院に連絡をするようにしてください!
赤血球は体に酸素を運ぶ役割があるので、赤血球が減ることで酸欠状態(貧血)になります。
結膜が白い・顔色が青白い・手足が冷たい・疲労倦怠感・動悸・頭痛・耳鳴り・脈拍が増える・食欲不振など
疲れやすく、めまいや立ち眩みを起こしやすいので、安静にし立つときは注意してください。
※貧血の状態が酷ければ赤血球輸血をします。
血小板には止血作用があるので、減少すると出血しやすく、血が止まりにくくなるので注意が必要です。
皮下出血(青アザ)・口腔内の出血・鼻血・血尿・消化管出血(腹痛、吐血、下血)・脳出血(頭痛、吐き気、嘔吐)など
『ケガに気を付ける』
爪で皮膚を強く掻かない・歯磨きは柔らかいものを使い、歯肉を傷つけない・カミソリを使わず電気シェーバーを使用する・鼻は強くかまない・排便時は力まない・体を圧迫するものは使用しない など
※血小板が下がり過ぎると血小板輸血をします。
副作用「夫の症状」
同じ抗がん剤を投与しても人によって起こる副作用は人それぞれです。急性骨髄性白血病の抗がん剤治療をした、夫の副作用がどんなものだったのかを紹介します。
・キロサイド 24時間 5日間
・イダマイシン 3日間
発熱・食欲不振・倦怠感・胸の痛み・腹痛・むくみ・貧血・赤血球、血小板、白血球減少・悪寒戦慄・高血圧・眼底出血・皮下出血・点状出血・味覚障害・下痢・痔・脱毛
抗がん剤投与後2、3日は副作用らしき症状はありませんでした。
抗がん剤4日目以降、胸の痛み・腹痛・38℃台の発熱・食欲不振など、つぎつぎ症状が出始め、特に食欲不振は食事が取れなくなって、病院の食事は止めてもらい栄養輸液の点滴をすることに。
- ヘモグロビンの数値も落ちて貧血だったので赤血球輸血は週に2度
- 抗生剤の点滴を毎日朝晩2回
点滴を24時間しているのにトイレの回数が少なくて、足のむくみが目立ってくると、朝夕体重をはかりある程度増えたところで、利尿剤を飲み強制的に排出します。
投与後1週間ほどで少し食欲が戻ってきたので、食事を再開しました。この頃血小板がかなり減ったので、初めて血小板の輸血をしています。
悪寒戦慄
8日目 この日の事は忘れません。比較的元気で普通に会話していたのに、目の前で急に「寒い!」と言って夫がガタガタとと震えだしたのです!
あわてて電気毛布を強にして体を包み、その上から布団をかけても「寒い寒い・・・」と震えながら訴えます。
驚いてナースコールを押し看護師さんを呼び異変を伝えると、とりあえず体温と血圧を測りました。熱は37.4℃。次に血圧を測ると中々測定できず、ようやく測れた数値が200越え!!
すぐに医師を呼びに行ってくれました。
この日は担当医がいなくて、当直の医師が来てくれ感染症の疑いの為2か所から採血し、体温を測ると38.4℃。解熱剤を飲んで様子を見ることになりました。
悪寒戦慄はこの後何度か繰り返しました。
そして、悪寒戦慄を夜中に起こした翌朝、眼底出血で視野欠損した夫です。眼底出血は今も眼科に通っていて、手術が必要だと言われています。
味覚障害
食欲不振が続いて病院の食事が美味しくないと不満を言っていましたが、投与後2週間してようやく味覚がおかしいことに気がつきました。
それまで、夫のわがままだと思っていましたが、少しずつ症状が出てきていたのか、夫の好きなお菓子を食べてもコーヒーを飲んでも、味がわからなかったので「味覚障害」だとわかりました。(この味覚障害は特に治療をしなくても、退院する数日前に治りました。)
味覚障害と下痢が続いたので、担当医と相談して病院の食事は止め、栄養輸液を点滴することに。
- ゼリー飲料
- ヨーグルト
- バナナ
- プリン
などを担当医に許可をもらって食べていました。
痔
抗がん剤治療の前から酷くなると言われていた、痔が心配通り痛みはじめ、座ることも出来ず横になっていても痛みで眠れない程になってしまいました。
痛み止めを出してもらいましたがまったく効かなかったので、ロキソニンを飲んでやっと痛みから解放されました。
ただ、飲んで数時間で痛みが戻ってきても、次に飲んでいい時間が決まっているので、それまで我慢するのが大変そうでした。
回復
血液の数値が良くなると、痔だけでなく味覚障害、食欲不振、倦怠感がどんどん良くなり、急に元気が出た夫は頭までスッキリしたのか、話し方も内容もかなり違って驚きました。
貧血で脳も酸素不足を起こしていたのでしょうか?
正直この数カ月、夫の言動に少し異変を感じていました。
脱毛
脱毛の兆候が3週間頃から出始めました。
事前に髪の毛は丸刈りにしておいたので、抜け毛はそれほど気になりませんが、よく見ると枕に落ちている髪の量は明らかに多くなっていました。
それでも思っていたよりは断然抜け毛は少なく、こんなものなんだと拍子抜したけれど、抗がん剤治療を2度3度と繰り返すとやっぱりほとんど抜けてしまうと思います。
まとめ
夫が経験した副作用はいろいろありましたが、幸い命に係わるような重篤な症状はありませんでした。
ただ、眼底出血での視野欠損は相変わらずで、手術もまだどうなるかわかりません。
抗がん剤治療もこれで終わりじゃなく、まだ始まったばかりで何度か入院して再び抗がん剤をすることになっています。
この先どんな副作用が起こるか分からないですし、不安が消えることはないと思います。
何も知らないと余計な心配までしてしまいがちです。これから抗がん剤治療をされる方には、事前にこんな副作用もあるんだと知り、それでも大丈夫なんだと少しでも気を楽に治療に臨んでもらえればと思います。