車でアメリカ横断することになったわけ

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Dさんとの出会い

５人でアメリカに渡ってしばらくすると、彼女のひろちゃんと2人で暮らし始めました。

その頃、働いていた飲み屋さんへよく来ていたお客さんの一人で、一際目を引いたのがDさん。

見た目は50歳くらいで、つるっぱげに口ひげ、眼光も鋭くてむちゃむちゃ怖かった！

何かあったら怒鳴られそうでDさんが来るたびに緊張していたのを覚えています。だから、そんなDさんと親しくなるなんて思いもしませんでした。

お店で何度か顔を合わせ話をするようになると、何を気に入られたのかDさんの家にまで呼んでもらえるようになったんですよね。Dさん宅へ遊びに行くと、他にもどこからか集まってきた日本人の男女がいて、皆で日本食をご馳走になる。

俺はアメリカに何のつてもなく勢いで来たから、お金に余裕があるわけじゃなく、知り合いだってまだ少なかった。だから美味しい日本食を食べながらみんなとワイワイするのが本当に嬉しかったんですよね。

Dさんには息子のように可愛がってもらい、アメリカでの親と兄弟が出来たみたいでした。

付き合いが長くなって、初めてDさんの仕事を知ったのです。

今だから言えるけど、Dさんは日本にいる頃暴力団のトップに近い存在だったらしく、その関係でアメリカに来て仕事をしていたようです。ただ、どんな仕事をしていたのかは教えてもらってないし、聞くこともなかった。

見た目は怖いDさんですが、普段はとっても優しい本当のお父さんみたいで、俺に何か見返りを求めることもなく付き合いはそのままでした。

俺やDさんが住んでいたのはロサンゼルスですが、何年か経ったある日、なんと

「Dさんがニューヨークで捕まった」と連絡がきたんです。
連絡をしてきたのはDさんの彼女C子さん。

罪状は「麻薬の密輸」・・・

仕事関係で以前からマークされていたらしい。

C子さんに頼まれたのは、Dさんの車をニューヨークからロスまで運んで欲しいということ。C子さんは運転免許がなかったから、困って俺の所に連絡してきたんですね。

お世話になったDさんの為ならと、俺とひろちゃんは飛行機でニューヨークへ向かいC子さんと合流。そして３人でのアメリカ横断が始まったのです。

【ニューヨークからロスまでのルート】

Dさんの車は新車のアウディー。

このアウディーでニューヨークから一路ロサンゼルスを目指します。

各都市での宿泊はモーテル。

アメリカのモーテルは日本と違って、旅行者が気軽に使える安いホテル。映画や海外ドラマでも見たことありますよね。車を部屋の前に駐車できるし、余計なサービスがない分安いし、簡素な部屋だけど寝るだけなら十分使えるんですよ。

いろんなところにあって行き当たりばったりでも宿泊できるし、立派なホテルも良いけど、モーテルは身近なアメリカを感じられてドライブ旅行にはお勧めです。

旅の目的は車とC子さんを無事にロスまで送り届けることだから、観光なんかする余裕もなくただひたすらロスを目指して車を走らせるだけ。

でも、一か所だけ寄ったのがホワイトハウス！

だってアメリカにいたら一度は見たいと思いません？外から見ただけだったけど、テレビや雑誌で見るそのままの真っ白な建物でした。

この時真冬でね、寒くて雪も降ったりしたけど順調にドライブは続いていました。ところがテキサス州のエルパソで大雪の為2泊する羽目に・・・無理に雪道をドライブして、事故でも起こしたら大変だからしょうがないですよね。

今思えばあちこち寄り道すればよかったよね。アメリカに住んでても東から西まで車で横断することなんてそうそうないんだから、ホント残念。

俺たち3人は無事にニューヨークからロスまで１週間で戻ってきました。

このアメリカ横断は南側。他にも

西海岸の縦断は往復したから、北側と東海岸も車で行けばよかったと日本に帰ってきてから後悔しましたね。

２５年住んでもアメリカは広いから行ったことのない所がほとんど。でもね、グランドサークルは車で回りましたよ！この時の話はまた別の機会に。

Dさんですが、その後一度も電話で話すことも会うこともありませんでした。

風の便りでは、アメリカで服役した後日本に強制送還されたとか・・・

罪を犯したんだからしょうがない事なんだけど、俺にとってDさんは良いお父さんだったから、こんなことになって本当に残念でした。

アメリカ横断やドライブ旅行に憧れる方も多いですよね。英語が話せなくてもどうにかなりますが、少しでも会話が出来るとより一層楽しい旅行になるし、何かあった時に会話が出来ると安心です。もし行きたいと思うなら「いつか」ではなく後悔しないよう早くチャレンジしてください！