霊安室でのお別れ
夫がいない部屋で荷物をまとめて待っていると、9時前に看護師さんが呼びにきてくれました。忘れ物がないか、部屋の中をすべてチェックします。
カートに荷物を載せ、看護師さん二人と一緒に夫が過ごした部屋を出るときには、今までの夫の姿を思い出し、もうこの部屋には戻れないんだと複雑な気持ちになっていました。
夫の元に向かいますが、廊下を何度も曲がりエレベーターに2回乗って、一度や二度では覚えられない離れた場所に霊安室はあります。
ここでやっと夫と再会できました。
順番にお焼香をした後に、葬儀社の方、主治医など男性が夫を病院のストレッチャーから別のストレッチャーに移動させ、寝台車へ搬送します。
病院を後に
大量の荷物も車に乗せてもらい、最期に主治医や看護師の皆さんにお礼を言うと、主治医から「間違いなく今までで一番印象に残る患者さんだったし、忘れられない患者さんになる」と言ってもらえました。
主治医には5年近くお世話になり、外来ではいつも夫と私の2人で診察室に入っていました。輸血をしている時には、廊下で待つ私に声をかけに出てきてくれたり、気さくで良い主治医です。
私についても、ここ数カ月で痩せたこともあり、かなり心配をかけていたようです。
血液内科の医師は何人かいますが、この主治医にずっと診てもらえたことに感謝しています。
最後に、去年お世話になった病棟の看護師さんに挨拶しようとしたけれど、顔を見ると胸が詰まり涙が出て何も言えませんでした。
血液内科病棟の看護師さんにも良くしてもらいましたが、この病棟の看護師さん達には、言葉では言えない特別な思いがあります。それは夫も同じで、あの病棟に帰りたがっていました。
葬儀社の前に家へ
夫を乗せた寝台車の助手席に座り、自宅近くの葬儀社へ向かいました。
話を聞くと、今はコロナの事があるので、お葬式を少人数でされる方もあれば、普段通り盛大に行う方もいるそうです。
手続きに印鑑が必要な事から、一度家に寄ってもらえる事になったので、荷物をどうしようかと思っていたから本当に助かりました。
荷物を家に入れ、印鑑と現金を持って再び寝台車に乗り、葬儀社へ向かいました。
※現金は会費と火葬料をすぐに支払う必要があったからです(カード不可)